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岐阜地方裁判所 平成5年(わ)110号 判決

本店所在地

岐阜県関市豊岡町四丁目一四番地

有限会社

西村組

(右代表者代表取締役 西村正一)

国籍

韓国

住居

岐阜県関市北天神二丁目二番二一号

会社役員

西村起明こと 金起明

一九三七年九月二一日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北野彰出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社西村組を罰金二二〇〇万円に、被告人金起明を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人金起明に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社西村組は、岐阜県関市豊岡町四丁目一四番地に本店を置き、建築物解体業等を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人西村起明こと金起明は、平成五年五月二八日まで同社の代表取締役としてその業務全般を統括していた者であるが被告人金起明は、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て、雑収入を除外したり架空の資金手当や残材処分費を計上するなどすることにより、所得を一部秘匿したうえ、

第一  昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における同社の実際の所得金額が九四四三万八〇二〇円であり、これに対する法人税額が三八六四万六一〇〇円であるのに、平成元年八月三一日、岐阜県関市川間町二番地所在の所轄関税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四九二万一〇六一円であり、これに対する法人税額が一四一万八五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額との差額三七二二万七六〇〇円を免れた

第二  平成元年七月一日から平成二年六月三〇日までの事業年度における同社の実際の所得金額が五八四九万七四一九円であり、これに対する法人税額が二二四五万二六〇〇円であるのに、平成二年八月三一日、前記関税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一二〇〇万三七五二円であり、これに対する法人税額が三八五万五〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額との差額一八五九万七六〇〇円を免れた

第三  平成二年七月一日から平成三年六月三〇日までの事業年度における同社の実際の所得金額が八八四五万一二四一円であり、これに対する法人税額が三一九七万八八〇〇円であるのに、平成三年九月二日、前記関税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一五四一万三五五一円であり、これに対する法人税額が四五八万九五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同社の右事業年度における正規の法人税額との差額二七三八万九三〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人有限会社西村組代表者西村正一の当公判廷における供述

一  被告人金起明の当公判廷における供述

一  被告人金起明の検察官に対する供述調書

一  被告人金起明の大蔵事務官に対する質問てん末書九通

一  佐藤忍の検察官に対する供述調書

一  佐藤忍(五通)、西村竜一(六通)、大脇清春、今川勇一、奥村正弘、林進、小林幸市、西村正一、金玉枝、西村公子(二通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録証第一五九号ないし第一六七号)

一  登記官作成の登記簿謄本二通

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(記録証第一八〇号)、脱税額計算書(記録証第一九二号)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(記録証第一八一号)、脱税額計算書(記録証第一九三号)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(記録証第一八二号)、脱税額計算書(記録証第一九四号)

(法令の適用)

被告人らの判示各所為は、各事業年度毎に法人税法一五九条一項(被告人有限会社西村組については、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人有限会社西村組については情状に艦み同法一五九条二項を適用し、被告人金起明については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人有限会社西村組については、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で罰金二二〇〇万円に処し、被告人金起明については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年二月に処し、被告人金起明に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、前判示のとおり、三期にわたり売上除外や経費水増等の方法により法人税を不正に免れた事案であるところ、ほ脱の規模において、ほ脱税額が合計八三二一万四五〇〇円に上り、ほ脱率も平均八九・四パーセントに達しており、高額高率で悪質であること、ほ脱の手段において、現金収入である小口の工事売上や屑鉄売却収入の多くを除外し、顧問税理士に帳簿の不正操作を指示するなど悪質な点があること、動機においても、不況への備え等基本的に被告人会社のためにしたものではあるが、そのことをもって特段酌むべき事情であるとすることもできず、本件の犯情はよくない。被告人金起明には廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反等の罰金前科もある。

しかしながら、被告人らは、反省の態度を示し、ほ脱した本税、所定の重加算税等の納付をすべて完了する一方、今後同種の脱税を図ることのないよう税理士の指導により経理体制の整備に努めていること、本件の発覚によりそれなりの社会的制裁も受けていることなど、被告人及び被告人会社のために有利な事情もあるので、これらの諸事情を総合勘案したうえ、主文の刑を量刑し、被告人金起明に対しては、今回に限り刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡部信也)

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